第九章 業

78/265
前へ
/1544ページ
次へ
「これは…そうか。受け取った。重綱殿に、有難くと伝えてくれ。」 「はっ!では、御武運を!」 馬廻りが、駆け出して行く。頼賢が一度、槍を頭上に掲げた。 それを振り下ろすと。寂しげな風切り音が響いた。 その残響を惜しむように、頼賢が空を見上げた。 「さて、出るぞ。忠好、俺が間違えを起こせば、いつでも斬れ。俺は、甘んじて受けるぞ。」 「下らん。お前など斬れば、刀が泣くわ。下らぬ心配をせずに、精々討死せぬ様にしろ。」 「ふふ、そうだな。お前に笑われながら死ぬのは、少々煩わしい。出るぞ!全隊展開!兵糧を必ず守り通せ!」
/1544ページ

最初のコメントを投稿しよう!

532人が本棚に入れています
本棚に追加