第九章 業

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「兵は解き放つ。逃がしても、大した問題にはなるまい。さて、目付け殿。この男はどう致すか?」 青い顔をした伊野が、忠好を見た。忠好の眼には、冷えが見える。 「取るに足らぬが、大殿にお任せしよう。おい、くつわを噛ませ、縛り上げろ。それと、馬を集めろ。三十は集められるだろう。三郎兵衛の隊にも、少しは騎馬を回せる。」 指示を受けた兵が、素早く動いた。五騎程が馬を追いたてる様に、馬を集めている。 眼の前に座る伊野が、縛り上げられた。恐怖の色を隠そうともせずに、小刻みに震えている。
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