532人が本棚に入れています
本棚に追加
頼賢の齢は、自分よりも十近く若い。自分は三十に差し掛かるが、頼賢はまだ二十なのだ。
澄み渡る笑顔は、始めて若さを感じさせた。
頼賢が拳を見つめている。黒く変色した拳は、歪な形のままだ。
木を叩き付け、拳から血を流していた。指の骨が見えても、やめなかったのだ。
「この拳を見るとな、父を感じるのだ。己の弱さを、父が抉り取ってくれた様に、感じる。」
「弱さか。俺には、解らんな。だが、お前の弱さは、消えたな。あの時の眼には、もう戻らないでもらいたいな。」
最初のコメントを投稿しよう!