第九章 業

106/265
前へ
/1544ページ
次へ
「なに、馬上にいても、逃げ出したくなることも有るさ。徒を勤めるには、俺などは臆病過ぎるな。」 「ふふ、お戯れを。飯が来たようです、腰を降ろしましょう。床机を用意させましょう。」 湯気を立てる椀が、運ばれてきた。朝の冷気に映える様に、濃い白を浮かべている。 「おぉ、有難い。汁まで有るか。冷え込むからな。染み渡りそうだ。」 腰を降ろすと、三郎兵衛と忠好も続いた。 「忠好、片手では食べづらくは無いのか?」 「やかましい。お前のお陰で、箸が巧くなったわ。お前も、片手で食ってみろ、味を良く解るようになるぞ?」
/1544ページ

最初のコメントを投稿しよう!

532人が本棚に入れています
本棚に追加