12 ためらい

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「ありがとうね、まゆちゃん。」 昼食を終えて総務課に戻った雪乃がそう言うと、 「いいえ。あの…まゆちゃんて呼んで貰えて嬉しいです。」 と笑顔で席に戻って行った。 雪乃も仕事を始めようと自分の席についた時、ポーチから机の上に移そうとした携帯電話が手の中で震えた。 『意外と泣き虫? 今夜会えるかな 』 澤田からの短いメールに短い返信をする。 『私も最近気付きました…。 今日は6時には終わりそうです。』 携帯をパタンと閉じるとすぐ返信が来てまた開ける。 『その頃また連絡します。』 思わずほころんだ口元を引き締めて、雪乃は午後の仕事を始めた。 午後6時を過ぎて、まゆたちと会社を出た雪乃は、用事があるからとみんなと別れ駅とは反対の方向へ歩いていた。 二つ目の交差点を左に曲がった先で澤田の車を待った。 社員食堂に遅れて来て離れたテーブルに着いた雪乃を気にして視線を投げてきた澤田の顔を思い浮かべる。 雪乃は泣く事で周りに心配されたり迷惑をかけたりするのはとても嫌だった。 それなのにこの頃は涙の出番が多くて戸惑っている。 ・
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