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「木本、片付けとか終わった?何か手伝う?」
退職を明日に控えて ひと通りデスクの整理や引き継ぎなどを終わらせた歩美が、フロアの隅にある休憩所でコーヒーを飲んでいるところに鳥海がやってきた。
「はい、とりあえずは終わりましたよ。」
歩美は自動販売機でコーヒーをもう一つ買うと鳥海に手渡しながら言った。
「鳥海さん、雪乃の事よろしくお願いしますね。」
「おぅ、分かった。
でも永山はしっかりしてるし、心配しすぎじゃないの、お前。」
相変わらずのくだけた口調で答える鳥海だが、頼りになる先輩だと歩美は思っている。
「そうなんですけど、雪乃、頑張り過ぎちゃう所あるから…」
「そうだな。
まぁ、言われなくてもいつも気にしてるんだけど…」
「はい?」
最後の方は独り言のようになってよく聞こえなかったが、鳥海は少し照れたような顔をしていた。
「鳥海さん、もしかして?」
歩美が尋ねようとした時、
「あ、ここにいたんだ。」
歩美の心配を知ってか知らずか、ニコニコしながら雪乃が小走りに近寄ってきた。
「歩美に聞きたい事があるんだけど」
「あ、そうなの?。
じゃ鳥海さん…」
「おお」
「鳥海さんも戻ってくださいね。課長が探してましたよ。」
「ん、すぐ戻るよ」
雪乃に促された鳥海は残っていたコーヒーを一気に喉に流し込むと、並んで歩いていくふたりの後を急ぎ足で追いかけた。
そして次の日
総務課の同僚の祝福と別れの言葉に送られて、木本歩美は寿退社をしたのだった。
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