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とその次の瞬間、くるりと背を向けた雪乃がまゆに何か言って化粧室へと走って行った。
澤田と鳥海は顔を見合わせた。
鳥海が「河野」と呼んで手招きするとまゆは化粧室の方を振り返りながらも早足で2人の所に来た。
「永山、どうした?」
「化粧室に寄るから先に行ってって。…でも目がうるうるしてたみたい、です。」
「うるうる…」
もう一度澤田と鳥海は顔を見合わせた。
「あ~、参ったな。」
鳥海は呟くと、
「先輩、後でフォローしといて下さいよ。」
小声で澤田の耳元に囁いてからまゆに向かって言った。
「永山を待っててくれるか?」
「はいっ。大丈夫です。」
鳥海はポンポンとまゆの頭を撫でると「よろしくな」と笑った。
「先輩、行きますよ。」
「ああ…」
鳥海は化粧室の方を気にしている澤田の腕を引いてエレベーターへと歩きだした。
雪乃がトイレに飛び込んで、ホッとして零れてしまった涙を拭き、少し落ち着いてから化粧室を出ると、手持ち無沙汰な様子で立っていたまゆが顔を上げた。
「あ、河野さん。待っててくれたの?ごめんね。」
「いいえ。行きましょう、時間なくなっちゃいますよ~。」
勘がいいまゆだからなんとなく察しているのだろうが、何事も無かったような態度がありがたかった
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