1 腕に触れて

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「…えっ!結婚?」 まだ春浅い3月の初め 公園の陽だまりの暖かさにぼんやりしていた永山雪乃の耳に その幸せの報告は飛び込んできた。 「うん、今月いっぱいで会社は辞めることにしたの 式は6月の初め頃にする予定なんだ。雪乃、必ず出てね」 「おめでとう!!」 雪乃は歩美の手を取ってギュッと握った。 「とうとう決まったんだね  絶対出席するね」 「ありがと!!」 照れくさそうに、でもニコニコと幸せそうな歩美の笑顔を見て雪乃も自分の事のように嬉しくなる。 永山雪乃と木本歩美は同期入社で知り合い 同じ課に配属されてから3年になる今では一番仲の良い友達になっていた。 今日のように天気の良い日には、会社の前の道路を挟んで向かい側にある公園でお弁当を食べる事も多かった。 日差しの強い日にはちょうど良い木陰を作ってくれる木の下の芝生の上に、雪乃が持参した大きめのビニールシートを敷く。 パンプスで疲れた足を伸ばすと 気持ちの良い風が吹いて 気分がリフレッシュされる、2人のお気に入りの場所だった。 ・
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