4 それぞれの気持ち

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澤田洋介が受付の城島由佳里に声を掛けられたのは、課長に頼まれた資料を届けて4階の会議室を出た時だった。 「お話したい事があるので少しお時間ください。」 受付らしい笑顔でそう言うと、澤田の返事を待たずに通路の突き当たりの非常扉の前まで行って振り返り、催促するように澤田の顔を見た。 内心「まずいな…」と思った澤田だったが、黙って後について非常階段に出る。 用件を聞いた澤田に、由佳里はアドレスを教えて欲しいと言ってきた。 営業の後輩の山崎経由で受付係との合コンの誘いは何回も来ていたが、合コン自体が好きではない澤田はその気も無くいつも断っていた。 「…ダメですか?」 長い髪が風に揺れてフワリと甘い香りが澤田に届く。 「ゴメン、悪いけど…」 甘すぎる香り。少し苦手だ。 「だったらこれ…」 由佳里が名刺サイズのピンクの紙を差し出す。 「私のアドレスです。」 「…ゴメン、受け取れない。」 さすがに由佳里の表情も硬くなる。 「…どうしてですか?」 澤田は申し訳ない気持ちになりながらも答えた。 「これを受け取ったら城島さんは俺からの連絡を待ってしまうかもしれないでしょう? 俺のためにそんな無駄な時間は…」 「もういいです!」 由香里は澤田の言葉を強く遮るとサッと背中を向けて非常扉を開けようとして一瞬動きを止めた。 「…何様?」 背中を向けたまま少し震える声で言うと、扉を開けて中に入っていった。 ガチャン!と大きな音を立てて扉が閉まった。 ・
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