3351人が本棚に入れています
本棚に追加
非常扉の向こうに城島由佳里が消えると、澤田洋介は大きく息を吐いて空を見上げた。
…何様、か。そうだよな。
わかってるさ、自分がすごくイヤな奴だってこと。…
自嘲気味の笑みが口元に浮かぶ。
少し間をおいてから中に入ろうと、澤田が引いた非常扉はカチャっと軽い音がしただけで開かなかった。
「マジ…?」
かなり怒らせてしまったようだ。
…嫌われた方が気は楽か…
仕方がないので1階まで降りてまた入ろうと階段を降り始めた澤田だったが、踊場を曲がったところで急に足を止めた。
3階の扉の前で女子社員がしゃがみ込んでいた。
不意に顔を上げる。
「あ…」
「あ…」
2人の声が重なる。
目と目が合って一瞬時間が止まった気がした。
・
最初のコメントを投稿しよう!