3351人が本棚に入れています
本棚に追加
慌てて立とうとした雪乃が先にその一瞬を動かした。
澤田もゆっくり階段を降り始める。
急いで立ち上がった雪乃だったが、しゃがんでいたせいか膝に力が入らずぐらりと身体がよろけた。
それを見た澤田は思わずタタッと階段を駆け降りて、雪乃の両腕を掴んで支える。
後ろでひとつに縛ってある雪乃の髪が一筋解けて頬にこぼれた。
「…大丈夫?」
「あ、はい。ありがとうございます…」
雪乃をきちんと立たせて両腕を離す。
雪乃が缶コーヒーを手にしているのに気付いた澤田が
「休憩?」
と訊ねる。
「いつからいたの?」という言葉は飲み込んだ。
「はい。」
俯いていた雪乃が顔を上げて澤田を見上げた。
雪乃の瞳が何か言いたげに揺れたような気がして、澤田は慌てて視線を雪乃の後ろの扉に移した。
・
最初のコメントを投稿しよう!