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「姉さんがそんな事を?」
紘平が肯くと、意外そうな顔をした澤田だったが考えながらゆっくりと話し出した。
「う…ん、でもそれは無いと思う。別に姉弟で同じ仕事だっていいんだし、これだけ環境が整っていても興味が持てなかったんだから。」
進学先を変えた時に、親の説得に協力してくれた姉の姿を思い出す。
「俺は、姉さんに感謝してるよ。」
「そう?ならいいけど。」
「本当だよ。…それに、今の会社に行かなかったら、…彼女にも出逢えなかっただろうし。」
照れた顔をしてグラスを傾ける澤田に紘平はクスリと笑いを零した。
「驚きだよ。洋介がそんな顔するなんて。…どんなコなの?」
「え…」
澤田は雪乃の姿を思い浮かべながら頬杖をついた。
少し酔ってきたようで、話す言葉も昔の様にざっくばらんになってくる。
「…普通のコだよ。笑顔が可愛い、どこにでもいるような…いや、いないかな?…とにかく、俺にとっては、特別な女性なんだと思う。」
「…聞いてるこっちが照れるな。」
笑いながら言う紘平を澤田は横目で睨んだ
「紘平さんだって…。姉さんは特別なんだろ?」
「ははは、だな。…俺はラッキーだよ、好きな女も、好きな仕事が出来る環境も手に入れて…なんだか、申し訳ない位だよ。」
「申し訳ないとかは無しにして。紘平さんがそう思っててくれるなら、俺も気が楽だよ。」
安心したように笑う澤田に紘平もゆったりした微笑みを返した。
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