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「…さっき、姉さんと何話してたの?」
「え?」
「俺と達也が遊んでた時。」
GWが明けて次の日曜日、澤田が雪乃を実家につれて行った日の帰り道で、ハンドルを握る澤田が聞いてきた。
「…洋介さんの女性遍歴?」
「…え?」
「ふふ。…じゃなくて、苦労話の数々、です。」
雪乃の訪問は澤田の家族の温かい歓迎を受けた。
澤田の母は優しい笑顔で雪乃の緊張を解いてくれ、案内された事務所を興味深そうに見る雪乃に父は目を細めていた。
義兄の紘平は澤田の肩に手を乗せて「なるほどね」と囁いた。
雪乃が初めて見る澤田のリフティングをする姿に頬を染めていると、
「なかなか上手いでしょ」
と姉の美波が声を掛けてきた。
「はい、びっくりしました。洋介さんは読書とか好きですし、どちらかというといつも静かな印象なので。」
雪乃がドキドキを隠してそう言うと、美波は可笑しそうな顔で笑っている。
「…きっとモテたでしょうね。」
思わず口に出してしまった雪乃に美波が肯いた。
「そうね。人気あったわね。洋介は嫌がってたみたいだけど。」
「そう、なんですか?」
「…元々大人しいコだったからね。」
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