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「まぁ、小さい頃のは笑える話でもあるけどね。」
「そうですね…。でも、何に傷つくか、どんな事を苦しく感じるかは、人それぞれ違いますから…。」
澤田を見つめながら優しい声で言う雪乃の横顔に美波は微笑んだ。
「ホントにそうね。私なら追いかけられたら蹴っ飛ばせるわ。でも中学の時に好きだった男の子に「女には思えない」って言われた時の悲しい思いはまだ覚えてる。」
「…それは私も辛いと思います。」
苦い顔をして答える雪乃に「そうでしょ?」と言いながらも美波は嬉しそうに笑っていた。
「雪乃さん。」
「はい?」
「ありがとうね。」
「…え?」
美波は達也の頭を撫でる澤田の姿に視線を移した。
「洋介、最近変わってきたわ。あんな自然な笑顔が見られて、私達も嬉しいの。」
「……」
「きっと雪乃さんのおかげだと思う。」
「私は、何も…。」
美波は微笑みながら首を振った。
「洋介の事、よろしくね。」
「…私でいいんでしょうか?」
「きっと、あなたじゃなきゃ駄目なのよ。」
澤田が達也を抱き上げて美波たちの方へ近付きながら、雪乃に向かって微笑んだ。
「ほらね。」
美波がクスクス笑う。
雪乃も微笑んで頬を染めた。
「暑っ。…何笑ってんの。」
「ふふ、何でもないわよ。シャワーしてきたら?」
「ああ。行くか、達也。」
「うん。」
美波と雪乃も2人の後について家に入っていった。
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