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澤田は雪乃の体を少し離すと、もう一度覗き込むようにして聞いてくる。
「え…、いえ。あ、そろそろお湯が沸きそうですね。」
雪乃は「あんなこと」を思い浮かべてしまった自分が恥ずかしくなり、さまよわせた視線の先にあったポットを見て照れ隠しのように言ってみた。
そんな雪乃を澤田は片手でぐっと引き寄せると、もう一方の手を伸ばして湯沸かしポットのスイッチを切り、雪乃の後ろで開いたままになっていた引き出しをスッと閉めた。
間接照明の仄かな灯りが造るぼんやりとした影が揺れる室内、
「……っ」
雪乃の肩の両脇に肘をついて体を支え、差し入れた長い指で髪を優しく掴みながら、澤田が落としてくるキスが雪乃の声を何度も途切れさせる。
恥ずかしさと苦しさと心地よさをどこかに逃がしたくて、ぐっと力を入れて澤田の肩と二の腕を掴んだ雪乃の手にその筋肉の動きが伝わる。
その瞬間、脳裏に昼間目にしたサッカーボールを操る澤田のリズミカルでしなやかな身体の動きが浮かんで、雪乃は自分の体が芯から熱くなるのを感じた。
体の中が波打つようにドクンと震えて言いようのない感覚に包まれる。
「‥っ、あ…」
「…雪‥乃?」
雪乃の中の変化に気付いた澤田が動きを止めて驚いた顔で雪乃をじっと見つめた。
見つめ返す瞳が戸惑いに揺れ潤んでくる。
「…どう‥しよう、私…」
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