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午前中にもう一度、詳しい話を聞いた澤田は昼休みに雪乃を屋上に呼び出した。
屋上庭園の一番奥で、会社の向かい側にある公園の緑を並んで見ながら本社への出張の件を話す。
最初は驚いた様子で聞いていた雪乃だったが、
「…入院された方、ひどい怪我なんですか?」
と聞いてきた。
「え?ああ、骨折と打ち身らしいから、復帰出来るって。」
「そうですか…」
雪乃はホッとした口調で目線を下げた。
「回復次第で出張期間は変わると思う…。」
「…そうですか。」
「フッ…、そうですか、だけ?」
澤田の笑いを含んだ問いに、雪乃は困ったような表情で澤田を見上げた。
その手は胸の前にある手摺をぎゅっと握っている。
「その間は何処に?」
「うん、会社の近くにウィークリーマンション借りてくれるらしい。」
「そ…、じゃあ少しお部屋は片付けて行った方がいいですね、冷蔵庫の中とか。私、手伝います。」
「…うん。多分日曜日に行くから、土曜日かな。」
「…はい。」
それからふたりはしばらく黙って風に揺れる木々とその向こうに見える芝生を眺めていた。
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