1 腕に触れて

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「はい。あの、さっきはすみませんでした。」 自然と一緒に歩き出しながら言う雪乃に澤田は 「ああ、別に気にしないで。それにしても急に止まるから驚いたよね。初めてだからさすがに焦った。」 と、とても焦ったとは思えない落ち着いた口調で言った。 結局エレベーターは原因が判るまで点検中となった。 「え~、エレベーター動かないの?」 出社してきた社員のため息混じりの声を聞きながら雪乃と澤田は階段を上り始めた。 「永山さん、今日は早い?いつもは会わないよね」 「はい、ちょっとやっておきたい仕事があって…。澤田さんはいつもこの時間ですか。」 「うん、電車が少しは空いてるからね」 …電車で通ってたんだ。 私、澤田さんの事何も知らないな… 雪乃は改めてそう思う。 「永山さん、仕事頑張ってるね。鳥海が、総務課は永山さんがいないと困る、って言ってたよ。」 「そんな事ないですよ。鳥海さんにはいつも助けてもらってます。」 雪乃は少し照れたような笑顔を見せた。 ・
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