25.星空と君の手 

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女の人がベッド周辺にカーテンをひいて囲む。 「百花さん、大変だったね。  でももう大丈夫だ。  運び込まれてきた時は、心配だったけど  順調に回復してるね」 「ベッドで眠ったままになってて体力が低下しているのと、  交通事故の際に、足を骨折しているからリハビリが必要になってくるかな。  診療計画が出来次第、百花さんの御両親を含めて説明していきます」 そう言って二人のお医者様は、 私の状態を診察しながら、優しく話しかけてくれた。 「えっと……お名前……」 お礼を言おうとしたのに、私の口から出てしまったのはそんな問いかけ。 「おじさんはね、託実の父の亀城宗成です。  理佳ちゃんの主治医をしていたこともあるんだよ。  おじさんの力が及ばず、理佳ちゃんの時は悪かったね。  向こうに居るのは私の家内、亀城薫子」 宗成先生がそう言うと、今度は託実のお母さんが ゆっくりと私に微笑みかけた。 「最後は私かな。    百花ちゃんを担当する、  託実の従兄弟の伊舎堂裕真です。    唯香ちゃんや雪貴君の主治医をしてるのは私の兄」 「名前はずっと前から知ってます。  伊舎堂裕さんも、伊舎堂裕真さんも。  昂燿校と、悧羅校の生徒総会をされてた方たちだから。  私も海神校の卒業生だから。  でもおかしいですよね……その頃から、ずっと託実のこと……  託実さんのこと気になってたのに、陸上部のエースの託実先輩が  Ansyalのベーシストの託実さんだなんて、思ってもなかったから」 そうやって答えた私に託実のお父さんとお母さんは、 嬉しそうに『ありがとう』と言葉をかけてくれた。 「親父、兄さん、まだ?  診察終わった?」 ふいに聴こえてくる声は、 痺れを切らしたらしい、託実の声。 そんな声を聴いて、三人はクスクスと笑い出した。 「百花さん、大変な子だけど  託実を宜しくね」 そう言って託実のお母さんは笑った。
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