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「託実、入っていいよ」
裕真さんがそう言いながら、カーテンを開けると
私のベッドの周囲は、まだ賑やかになる。
皆と沢山、話してみたいけど
まだ私の体力は落ちたままみたいで、
暫くすると、瞼が重たくなって閉じていく。
「あらあら、百花も疲れたみたいね。
後は託実さんに任せて、
お母さんもお父さんもお祖父ちゃんと一緒に帰るわね。
またお見舞いに来るわ」
「じゃ、私も帰る。
雪貴、行こうか」
お母さんと唯香の声が聞こえて、
足音が遠ざかっていく。
静かになった病室。
「百花、もう少し休むといいよ。
俺も隣のソファーで仮眠してるから」
託実はそう言うと、
掛布団を掛けなおしてくれて唇を重ねた。
「お休み、百花」
そう言って離れようとした託実に思わず手を伸ばす。
私を伸ばした手を、
託実はすぐに掴み取ってくれて微笑む。
「眠るまで此処に居てやるよ。
百花、結婚を前提に付き合わないか。
今日からもう一度」
突然の言葉に思わず涙が零れ落ちる。
悲しいから流す涙じゃなくて、
嬉しすぎて溢れだした暖かい涙。
「私で……いいの?
私はお姉ちゃんじゃないよ」
素直に飛び込みたいのに、
可愛くない私はそう問いかける。
「百花だから……いんだよ」
託実はそうやって、
照れくさそうに教えてくれた。
次に目覚めた時も、次の次に目覚めた時も
私の傍には、託実の笑顔がそこにあった。
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