-戦国の世へ-

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「ならば、そなたの話を信じるしかあるまい。そなた自身の素性も説明がつかぬばかりか、そなたが見せた物も見慣れぬものばかり。だが、そなたの話の通り、未来から来たとすれば説明がつく」 絢乃が説明の付かない存在であるのは、未来から来た…本来ならば戦国の世に居ない存在だから。 絢乃が見せた品々を見た事も無いのは、未来の品であり、戦国の世には存在しないものだから。 そう考えれば納得がいく。 男がそう言えば、絢乃は安堵からか全身の力が一気に抜けた。 だが、安堵すると今度は安心感から緊張の糸が切れ、絢乃は抑えていた感情が溢れ出した。 安心感からなのか、質の悪いからかいをしてきた男に対する怒りなのか、絢乃の大きな目からは涙が次々と零れたのだった。 「じゃあ、最初からそう言ってよ!毒が入っているなんて…本当に死ぬかと思って怖かったんだから!!」 目に涙を浮かべながら睨み付けてくる絢乃に、男は気まずそうに視線を逸らした。 「……だから、すまなかったと言ったであろう。…未来は…戦の無い平安な世界なのだろうか?」 男には、絢乃の反応から絢乃は、戦や命の危険からは程遠い世界で生きてきた様に思えた。 この戦国の世では信じられない環境であるが、絢乃はもしかしたらそんな環境で生きてきたのかもしれない。 だとすれば、先程の事は絢乃にとって、かなり酷な事をしたかもしれない。
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