-戦国の世へ-

22/23
前へ
/32ページ
次へ
そんな思いを抱えながら男が問えば、予想通りのものが絢乃からは返ってきた。 「外国は戦争とか内紛とかあるけど、日本には無いわ。そりゃあ、殺人とか色々と全く無い訳じゃないけど…日本の治安の良さは世界有数よ」 「……日本国内で戦が無い、だと?」 絢乃が平和な世で育ったのだろうとは予測していたが、日本国内で戦が無いという内容には男は驚かずにいられなかった。 今はこんなにも、あちこちで戦火があるというのに、絢乃がいた未来ではそれは無い。 それが意味するのは一つだ。 「つまり、誰かが天下統一を成し遂げたという事なのだな?」 この戦乱の世が平和となる。それは何者かが天下統一を果たさなくては、なり得ない未来だ。 今はこうも荒れている世の中だが、いずれは天下統一の覇者が現れる。 何気なく紡がれた絢乃の言葉から未来を知った男は、初めて動揺を絢乃に見せた。 「誰が天下統一を成し遂げたのだ?その者の支配体制がずっと続いているのか?」 次々と紡がれた質問に絢乃は困惑した。 質問に答えるのは容易いが、果たして素直に口にして良いのだろうか? そう迷ったのだが、絢乃は一瞬の間の後、その迷いを消し去った。 (言えないわ。この人が何者かも分からないし、未来を迂闊に口にすれば、未来が変わる危険がある) 未来が変わってしまえば、絢乃が未来に戻った時に、絢乃の存在が無いかもしれないのだ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加