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「絢乃、あんたまた振ったんだって?」
着信を知らせる携帯の呼び出し音に絢乃が携帯を取り出し、通話ボタンを押すと、親友の美耶の声が飛び込んできた。
「美耶…情報早くない?」
「美耶様の情報網を見くびって貰っては困るわよ」
おどけた声でそう言う美耶に絢乃は小さく笑った。
「美耶ったら」
絢乃が笑うと、電話の向こうで美耶もまた小さく笑う気配がした。
だが次に聞こえてきた美耶の声は、どこか沈んだ声だった。
「ま、冗談はさておき、今まで聞かないでいたけど、あんた…高三の夏に数日間行方不明だった事あったでしょ?あの間に何があったの?あんた…あの日から前みたいに笑わなくなったよね。太陽みたいに笑ってたのに」
高校三年の夏。
絢乃は受験勉強の息抜きに、美耶を含む友達と近所の神社に夏祭りに出掛け、行方不明になった。
数日後に絢乃はふらりと戻ってきたが、以前の様に明るく笑う事はなく、どこか遠くを悲しそうに見るようになっていた。
そして、行方不明となる前は、明るく活発で無鉄砲な行動も度々見られていた絢乃だが、その日を境に大人しくなった。
絢乃は明らかに変わった。
何があったのか、いつかは話してくれるだろうと美耶は何も聞かずに絢乃を見守り続け、気が付けば、見守り続けて二年が経とうとする。
話してくれるまで聞かないと決めていたが、絢乃が心配で、とうとう美耶は問い掛ける事にしたのだった。
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