その壱

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正直それだけでも足りないかもしれない。そこまでの相手だ。 真剣を持って敵対したなら、目を合わせた刹那に殺されてしまう。  士として確実に強い存在を確信する。そして──、 一際高い音がした瞬間、優男の一刀によって、木刀を飛ばされていた。勝負は決まった。いや、初めからこうなることが誰もがわかりきっていたと言える。最初からまとも戦える相手ではなかった。動きすぎたせいと、相手の強さを肌で実感した恐ろしさ、両方の理由から背中にじっとりと絡みつくような汗が、幅の広い肩で息をしている男には気持ち悪く感じた。  「ふうっ、なんとか今回は上手くいきましたね…」  反対に優男は嘆息している割には、汗一つかいておらず涼やかに柔らかく笑う。髪を下ろすと確かに女性と見分けがつかないかもしれない。そのくらい整った顔立ちをしていた。 上手くいったとは、手加減がうまくいったのだ。普段の彼はこんな事はしないし、誰も彼には挑まないからだ。
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