隙間

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「時間経つの早いな…」 心の声がぽつりと漏れていた。 楽しい時間は過ぎるのが早い。 「今日も泊まってけば?」 「え…さすがに悪いよ」 「全然悪くねーよ!」 「でも…」 家族の人にも申し訳ないっていうか…。 「んー…じゃあ」 「?」 首を傾げて見上げると、彼は含み笑いで顔を近づけてきた。 「帰れないようにしてやろうか?」 「へ?」 ニッとイタズラに笑う彼。 僕は途端に顔が真っ赤になって、ひどく動揺した。 「な、な何言ってっ!」 「はい逃げない」 「んっ」 後退りする僕の腕を掴んで引き寄せ、キスされた。 頭の後ろに手を添えて、さらに深くなる口づけに身体が痺れる。 「…、かみねくん…」 「…名前で呼んで」 「あ…りょう…」 「カナ。好きだ」 「あ…っ!」 本当に帰れなくなって、僕はその日も彼の家に泊まった。 抱きしめたまま離してくれない彼に、暑くないか聞いても大丈夫の一点張りだった。 「……」 優しくて、でも時に強引で。 愛しくてわがままな愛情。 控えめな僕にはこれが丁度いい。 いつだって心の隙間をうめてくれるのは、彼の愛なんだ。  
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