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そんな時、ドーンと大きな音が響いた。
上を向くと、花火が舞い上がっていた。
「わぁー…」
周りで歓声が上がり、花火は色彩豊かに輝いて消えていく。
座れそうな場所に腰掛けて、思わずため息がもれた。
楽しみにしていた花火大会。
ようやく見れた花火だけど…。
何やってんだろう僕。
高峰くんと見るはずだったのに。
何で逃げちゃうかな。
もっと自信持って堂々としてなきゃいけなかったのに。
本当に呆れられちゃうよ。
うまくいかないなぁ…。
二人でいる時は幸せだけど、外に出て彼が女の子と一緒にいるのを見ただけで、どうしようもなく不安になる。
悲しくて寂しくて、無性に腹が立ったりして、気持ちの整理がつかなくなるんだ。
花火を一人眺めながら切なくなり、またため息がこぼれて僕は俯いた。
「佐々木?」
「え?」
すると突然名前を呼ばれ、ハッとして顔を上げた。
「…あ、松岡くん」
まさか会うと思わなかったので、少し驚いた。
彼は七瀬さん達と来ていて、先に帰ろうとしていたところらしい。
「良太は?」
「あ…何かはぐれちゃって」
「はぐれてって、子どもかよ」
「はは…そうだよね」
「……」
ほんと、情けないよ。
松岡くんは、落ち込む僕の隣に腰掛けた。
「…何かあったのか?」
「……」
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