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松岡くんは、携帯を取り出して誰かに電話をかけだした。
「――あ、良太?今どこにいる?」
えッ!高峰くん!?
「じゃあその道真っ直ぐ来いよ。来たら分かるから。じゃあな」
彼は電話を切って、携帯をズボンのポケットに入れ、立ち上がった。
「じゃあ俺帰るわ」
「え、帰るの?」
不安げな声を出す僕を見て、彼は小さく笑う。
「安心しろよ。あいつはお前のノロケしか言わないから。聞かされるほうはウゼーけどな」
松岡くん…。
「あの、ありがとう!」
後ろ姿にお礼を言うと、彼は軽く手を挙げて去って行った。
その背中を見送っていると、
「カナ!?」
高峰くんが走ってきた。
息を切らして、額に汗が滲んでいる。
「カナ!良かった…!携帯繋がんないし、捜してたんだよ」
「あ…充電切れてて…」
彼が来てくれて嬉しい反面、すごくいたたまれない気持ちになった。
「あの…ごめん…僕」
「こっち。来て」
「え?」
彼は急かすように僕の手を引いて歩き出した。
前を歩く彼、繋いだ手を見つめながら、その感触と熱さに自然と顔の筋肉が緩んでいた。
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