深紅の薫り

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 苦しみと痛みと恐怖が融けた液体が溢れ出て、暗い視界を歪めている。  ここはどこなんだろ……?  汚れた袖口で涙を拭って周りを見回すと、明かりの落ちたマンションやアパートらしき輪郭がぼんやりと黒く浮かんで見える。  初めて来た街を出鱈目に走って逃げていた私は、いつの間にか、人気の無い住宅街に迷い込んでしまっていた。
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