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ファンイルを振り落とそうと激しく飛び回るザイゴートだが、ファンイルは振り落とされる前にザイゴートの眼球に手刀を突き入れた。
大きなダメージを負ったザイゴートが気絶し、急速な落下を始めた。
ファンイルは気絶したザイゴートの背中部分に当たる【荒胞体】を腕甲型神機の刃で切り落とすと、本体を捨てた。
【荒胞体】は中でガスを生成する組織で、ザイゴートの浮力を司っている。
よって、重たい本体部分を切り落とすことで、ガスが抜けるまで一時的な浮力を持つ。
「キュロッキュロオオッ!!」
ゆったりと着地した先で、荒胞体を結合崩壊させたザイゴートがのたうち回っていた。
浮力を司る器官を破壊されたせいである。
ファンイルは右手で荒胞体を捕喰することでオラクル細胞を体内で生成しながら、左手で散弾を連射した。
ほどなくしてザイゴートは沈黙する。
ファンイルはすぐにその場を離れた。
救助を待つ者の常識として、遭難した場所を動かないというものがある。
しかしこの場合はザイゴートの断末魔を聞いた他のアラガミが集まってくる危険性があるため、そうも言っていられない。
(……極東支部はそんなに遠くない。
すぐに誰か来てくれるはず)
ファンイルは返り血をぬぐいながら近くに教会を見つけて中に入った。
(それなりの広さと隠れる場所もある……よし、ここにしよう)
ファンイルは堂の角に腰を降ろした。
その際、足元に光る石を見つける。
(きれいな石……ここの教会のガラス?
ううん、違う。これは……オラクル輝石!?)
ファンイルはすぐに立ってその場を離れることにした。
オラクル輝石があるということは、強力なアラガミがそこを餌場にしている可能性が非常に高いからだ。
そんな場所に長時間留まることができるわけがない。
しかし、そいつは教会の入り口からスウッと空気のように滑り込んできた。
きらびやかな純白の体は宙に浮いており、足音が立たない。
そのためにファンイルは接近を許してしまった。
(……ゼウス!?)
「ピロロロ…ピロッ!?」
ゼウスは視界にファンイルを捉えると、攻撃的な喜色を身を震わせて表現した。
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