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「……ニイハオ」
なんとなく中国語で挨拶をしてみたファンイルは、ゼウスが近づいてくるまでに体力増強剤とスタミナ増強剤でオラクル細胞の血中濃度を上げた。
ゼウスがファンイルの足元を睨むと、そこに光の柱が出現した。
生物を死に至らしめる解析不能のエネルギー体は、別次元のエネルギーとされている。
2次元の世界である漫画の中身を鋏で切り取るように、神はこの世界を捕喰するのだ。
ファンイルは睨まれてから光の出現するその一瞬でその場を飛び退いた。
「日本に来たら使おうと思ってたネ……オラクル手裏剣!!」
3発の発砲音。
3発の通常弾から伸びる3本の放射バレットが、回転しながらゼウスのスカートを灼く。
合計9発の放射をスカートで受けたゼウスは、忌々しげに一つ目をぎらつかせた。
仕留めるためにと突進で距離を詰めてくる。
対するファンイルもゼウスに走り寄る。
そのまますれ違い様に左腕刃で一閃。
「堅……ッ!!」
斬った感触がしない。
ゼウスの弱点は神。
腕甲型神機には汎用性を求めるために
右拳…炎
左拳…雷
右腕刃…氷
左腕刃…神
と属性を分担しており、敵に応じた近接攻撃を仕掛けることができるのだが、ゼウスのスカートには弱点である神属性による切断攻撃があまり有効でないらしい。
視界から獲物が消え、一撃を入れられたゼウスは、焦って光の柱を自分中心に展開する。
(……銃撃で先に崩壊させるべきか)
ゼウスのこの行動は数秒間持続するため、その間にファンイルは薬でオラクル細胞を供給する。
振り向いて再び突進の構えを見せるゼウス。
(……また同じ行動を取るつもりか?)
しかし今度の突進は違った。
ジグザグに広範囲をカバーしながら襲いかかってきたのだ。
ファンイルは間一髪で見切って避けたが、ゼウスに余裕を持って距離を詰められる。
次の瞬間、毒粉がファンイルに吹き付けられた。
「ぐッ……!!」
デッドリーヴェノムに架かってしまったが、それを押してファンイルはオラクル手裏剣を再び放った。
「ピロ――ッ!!」
ゼウスのスカートが結合崩壊を起こし、バランスを崩して落下する。
(よし、今のうち)
ファンイルがアンチベノムを摂取して再びゼウスに向かおうとしたその時だった。
「ガアアアッ!!」
ファンイルを背中からとてつもない衝撃が襲った。
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