第1話 紅の記憶

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冷える体と裏腹に灼熱を思わせる痛みとともに熱い血は右目から次々と溢れ出す。 白く染まっていた地面に赤い点を作りながらひたすらに走った。 片目だけでは距離感が掴めず、何度も倒れ、何度も立ち上がり、走った。 山の中をただひたすらに走った。 キルは寒さと出血により体の感覚がなくなっても尚走った。 そしてまた転ぶ。 立ち上がろうとしたが、体は鉛のように重く、少し動いただけだった。 その時やっと走る以外の思考が働き始めた。 家族皆……殺された。 「うわぁぁぁあああああ!!!!」 山の鳥達が一斉に羽ばたく、激しい叫び声。 涙が溢れた。 自分は一人あの場から……逃げ出した。 家族を見捨てて。 「ああああ……」 自分を殺したくなった 自分も憎いが、家族を殺した男達はもっと憎い。 キルの残された瞳に怒りと憎しみが宿る。 復讐してやる…… 復讐してやる……っ! まだ死ねない!
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