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「そんな覚え方、私思い付かなかった」
「桂木さん賢いもん」
頭の悪い俺たちはこうでもしないと覚えれないのです。
「佐藤君、すごいね」
「そう?」
「うん。他には、どんな覚え方があるの?」
「他? 長い文章を、リズムで覚えたり……」
「リズム?」
「うん。例えば……」
それからは、桂木さんに俺なりの覚え方を教えていた。
すごくしょうもない覚え方も、桂木さんはすごく興味津々に聞いてくれた。
たぶん、こういう覚え方をしようとする発想がないから、ちょっと珍しかったのかな?
あまりにも真剣に聞いてくれるものだから、こっちも楽しくなって、時間を忘れてずっと喋っていた。
「……へえ、そんな覚え方があるんだ」
感想を漏らしながら、桂木さんは六つ目のみかんを食べ終える。
! やば、もう19時だ。
「あ、俺そろそろ帰るね」
「え……今日、お母さんとお父さん帰ってくるの遅いから、もう少しいても大丈夫だよ?」
「ごめん、俺ん家お父さんが教師でさ、門限が厳しんだ」
早く帰らないと……怒られる。
「じゃあね、桂木───」
「あ、待って佐藤君」
何です、立ち上がった瞬間に呼び止めて……。
「あの、私……恋愛感情にも、興味ある」
………………はい?
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