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……ガチャ。
「おはよ、佐藤君」
「……おはようございます」
……幻覚じゃない。
どうして……俺の家を知らないはずの桂木さんが、こんな朝っぱらから俺の家の前にいるのだろうか。
「あの……どうしたの?」
昨日のこともあって、こうして話すのも壁を作ってしまう。
「佐藤君、迎えにきた。一緒に……学校行きたくて」
……そのセリフを是非とも一昨日の俺に聞かせてやりたかった。
どれほど喜んだか検討もつかない。
「何で俺ん家知ってるの?」
ただ、今の俺は素直に喜べない。
例えるならアレ、色褪せて味の悪いみかんは食べたくないっていうやつ。
今の俺には、みかんちゃんが色褪せて味の悪いみかんに見える。
「? 調べたからだよ」
調べてわかるものなんだ、他人の家って。
「いつからそこに?」
「んー……7時くらいかな」
7時!? 今が8時15分だから……1時間以上も待ってたんだ。
「でも、佐藤君のこと考えてたら、あっという間だったよ」
人通りの少ない通学路を、桂木さんと並んで歩く。
ホントは嫌だったけど、追い返す程非情にはなれなかった。
横目で桂木さんを見る。
少し俯きながら歩くその顔は、とても可愛かった。
可愛くても……昨日のアレで、桂木さんに対する想いは少し冷めたのは事実。
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