柑橘系被害

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 坂を上る頃には、周りにも見知った顔がちらほら。  視線を感じる……。 「あ、桂木さん。俺、職員室に用事あるから先行ってるね」 「え、うん」  その視線に耐えられず、嘘をついて桂木さんより早く坂を上った。  この……嘘ついたときに出てくる罪悪感、嫌だな。  でも、こうでもしないと……教室まで一緒になるし。 「ハァ……」  深いため息をつきながら、自分の席に座る。 「お、今日は早いな亮太」 「……降屋」  ……そうだ、元を辿ればこいつがbaseballの綴りを間違えてからこうなってしまったんだ。 「な、何?」 「降屋、今日から絶交だ」 「はぁ?」  そのあと、遅れて桂木さんが教室に入ってきた。  入ってきたのに気付いてたけど、わざと見ないようにした。  わざと見ないようにしてるのに……どうも気になって仕方ない。  朝からずっと、気になってるけどあえて気付かない振りをしてるものがある。  ……桂木さんの制服の胸辺りから、みかんのイラストが透けてるんだよね。  多分みかんのイラストが描かれてあるTシャツを着てるんだと思うけど……それがもう、気になって仕方ない。
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