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「なあ、亮太」
「んー?」
桂木さんからのストーカー被害を受け早一週間。
こんな言い方なんだけど……だんだんストーカー被害に慣れてきた自分がいる。
朝に来るメールも、今じゃ目覚まし代わりになってるし。後をつけられるのもiPodを聴いてりゃ気にならない。夜の22時30分に来るメールも、お風呂に入る合図に使ってる。
「お前、みかんちゃんと付き合ってるってマジ?」
そんな中降屋から言われた、この一言。
「はぁ?」
驚きながら後ろを振り向く。
後ろの席に座ってる降屋は、桂木さんの方を気にしながらこそこそ話し始めた。
「最近、お前しか歩かない『あの』通学路でみかんちゃんを見たって奴がいてさ、何か……みかんちゃんの家はお前ん家とは逆方向らしくて、それが噂になってて、俺の耳に入ってきてさ」
……そんな噂流れてたんだ。
全然知らなかった。
「で、どうなの? 付き合ってるの?」
「付き合ってねーよ」
「けど、あの道でみかんちゃんを見たって奴いるぞ?」
「見間違いじゃね?」
そう言って身体を前にする。
ストーカーの被害にあってる、なんて……言えないな。
今……11時半か。どうりで腹が空いてきた訳だ。
「……そうかな? あの髪の色見間違えるかいね」
確かに……それはある。
「それは知らないけど」
背中で返事をしながら、机の中に手を突っ込む。
「……ま、付き合ってないんならたぶん見間違いかなんかだな。悪い、こんなこと聴いて」
確か、この辺り……あった。
「いいよ、別に」
桂木さんが入れてるであろう、みかん。
それを机に出して、皮を向く。
このいっつも入ってる、二限目の休憩時間から三限目の休憩時間までに必ず机の中に入ってるこのみかん。
これが結構嬉しかったりする。
お腹が空いたらこうして食べれるしね。
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