柑橘系噂話

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「…………お前、絶対みかんちゃんと付き合ってるだろ」  だから……付き合ってないって。 「さっき言ったろ。付き合って───」 「あーはいはい、わかったわかった。お前らのこと聴かれても黙っててやるから、お幸せに」 「は?」  あ、おい……  呼び止める暇もなく、降屋は教室を出て行った。  何だよ急に……。  前に身体を向けるとき、机の上でみかんを向いている桂木さんが目に入った。  ……あー、なるほど。降屋が付き合ってるとか言ったのはこういう訳か。  俺と桂木さんが付き合ってる。  そんな噂が流れてたなんて……。  桂木さんに対しての想いが冷めてたのは事実。  ストーカーみたいなことをされて気味が悪いと思ってたのも事実。  なのに、なのに……。  そんな噂が流れてても、嫌な気持ちにはならなかった。  スタ、スタ、スタ───。  足音だけが響く、放課後の通学路。  iPodを聴いていないため、後ろにいる桂木さんの足音も聞こえている。  ……桂木さんは、噂が流れてることを知ってるのだろうか。 「桂木さん?」  気付いたら、足を止めて声を出していた。  俺が足を止めると同時に、後ろから聞こえていた足音も止まる。
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