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「亮太ー、暇ー?」
日曜日。時刻12時15分。
「まあ、暇」
ソファに寝転んで新喜劇見てるけど……まあ暇。
日曜日は暇なくらいがちょうどいい。
たまにはこうしてゆっくり過ごすのもいいよね。
「お昼の肉じゃがが少し余っちゃったから、梓ちゃん家まで持ってってくれない?」
とか思った瞬間に言われた、お母さんのこの一言。
ん……梓ちゃん?
梓ちゃんって……
「もしかして、桂木梓?」
「そうよー。他に誰がいるの?」
いやいやいや、いつからちゃん付けで呼ぶほどの仲になったのですか?
「この間スーパーでばったり会ってね、親が共働きだからご飯自分で作ってるんですって。大変だと思うから、おっそわけしようと思ってね」
あ、そういえば初めて桂木さんの家行ったとき、帰りが遅いとか言ってたっけ。
「……嫌、めんどくさい」
……初めて桂木さんの家行ったときのこと思い出しちゃった。
またあの家に行ったら、何が起こるか……。
「……そういえば亮太、もう三年生ね。去年はすごく成績落として……今年は大丈夫?」
ぎく。
「もし今度のテストダメだったら……お父さんにまた教えてもら───」
「わかったわかった! 行く、行けばいいんだろ!?」
中学のとき、桜坂高校を受験したいと担任に言ったら『お前の成績じゃ無理だ』と言われた。
その際、お父さんに勉強を教えてもらったのだが…………泣きながら勉強してた覚えがある。
「ちゃんと届けるのよ」
「はいはい」
自転車に乗って、桂木さん家に向かった。
カゴに肉じゃがが入ったタッパーが入った紙袋を入れて。
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