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ハァ、嫌だな……桂木さん家。
また襲われたらどうしよ……。
憂鬱な気分でゆっくりと自転車をこぎ、時間を掛けて桂木さん家についた。
……ついてしまった。
さて……サッと渡してサッと帰るか。
桂木さん家の前に自転車を止めて、鍵を掛けずに自転車から離れる。
左手に紙袋を持って、玄関の前に立ち、右手でインターホンを押した。
ピンポーン。
……ガチャ。
『はい、桂木です』
「ぁ……桂木さん?」
『……佐藤君?』
え、何でわかったの?
「え、うん、佐藤です」
『ち、ちょっと待っててッ』
「あ───」
ガチャ。
切れちゃった。
あ、家の中から足音……
家の奥から足音が近付いて来て、それが玄関まで来て、ガチャって鍵が開いて……
「お、おはよ、佐藤君」
桂木さんが出てきた。
少し寝癖がある髪に、オレンジのエプロン姿。
「あ、もしかして……料理中?」
「え、うん。カレー作ってた」
うん、カレーの匂いがする。
「どうしたの……日曜日のお昼に?」
んー、渡しにくいけど、渡さなきゃね。
「あの、お母さんが……桂木さんに肉じゃが渡してきてって」
「おばさまが?」
「……うん、そう。余ったからおそそわけだって」
おばさまが。
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