柑橘系料理

3/7

2812人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
 ハァ、嫌だな……桂木さん家。  また襲われたらどうしよ……。  憂鬱な気分でゆっくりと自転車をこぎ、時間を掛けて桂木さん家についた。  ……ついてしまった。  さて……サッと渡してサッと帰るか。  桂木さん家の前に自転車を止めて、鍵を掛けずに自転車から離れる。  左手に紙袋を持って、玄関の前に立ち、右手でインターホンを押した。  ピンポーン。  ……ガチャ。 『はい、桂木です』 「ぁ……桂木さん?」 『……佐藤君?』  え、何でわかったの? 「え、うん、佐藤です」 『ち、ちょっと待っててッ』 「あ───」  ガチャ。  切れちゃった。  あ、家の中から足音……  家の奥から足音が近付いて来て、それが玄関まで来て、ガチャって鍵が開いて…… 「お、おはよ、佐藤君」  桂木さんが出てきた。  少し寝癖がある髪に、オレンジのエプロン姿。 「あ、もしかして……料理中?」 「え、うん。カレー作ってた」  うん、カレーの匂いがする。 「どうしたの……日曜日のお昼に?」  んー、渡しにくいけど、渡さなきゃね。 「あの、お母さんが……桂木さんに肉じゃが渡してきてって」 「おばさまが?」 「……うん、そう。余ったからおそそわけだって」  おばさまが。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2812人が本棚に入れています
本棚に追加