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「……ありがと」
あ、やっぱり少し困った顔してる。
「いらないなら……俺が食べるから無理に貰わなくていいよ?」
俺なりの気遣い。
「……あ、それなら……」
そう言うと、紙袋の中にあるタッパーを見ながら桂木さんが口を開いた。
「あの、私がこの肉じゃが食べるから、そのぉ……私が作ったカレー、食べる?」
……あぁ、変な気遣いしなきゃ良かった。
こんなセリフ、上目遣いで言われて断れるわけがない。
「で、でも……迷惑じゃない?」
一応、気を遣ってみる。
「ううん、そんなことないよ。私も……佐藤君に、食べてほしいし」
頬を赤らめて言う桂木さん。
「もうすぐ出来るから、座って待ってて」
「あ、はい」
台所の前にある四人掛けの机に座る。
……上がっちゃった。
ダメだな、俺。サッと渡してサッと帰るって決めてたのに。
あ、自転車の鍵掛けてない……いっか、もう。
視線を前にして、台所に立つ桂木さんの姿を見る。
エプロン姿で、少しぎこちない手つきで作業をしている桂木さんは、とても可愛らしかった。
……ホントはすぐにでも付き合っていいんだけど。
ストーカーと付き合うのは、少し抵抗があります。
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