柑橘系料理

7/7

2812人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
「え……弁当?」  桂木さんの……手作り弁当。  ……味が薄そうだ。 「でも、そんな、桂木さんに迷惑だし……」  それに、もしそのことがクラスの誰かにバレたら、どんだけいじられるかわからないし。 「……」  あ、桂木さんからすごい負のオーラが……。 「やっぱり、私が作る弁当なんて……食べたくないよね」 「いや、そうじゃなくて……」  ああ、もっと沈んじゃった……  ……もう。 「……食べたい」  どうしても非情になれない。 「え?」 「もし、桂木さんが迷惑じゃないんなら……桂木さんが作った弁当、食べたいな」  そう言うと、さっきまで沈んでいた桂木さんの顔が、嘘みたいに明るくなった。 「うん! 頑張って作るね」  桂木さんの笑顔は、とても眩しかった。  それを正面から見てると、何だか恥ずかしくなって、ごまかすようにカレーを口に入れる。  うん、無味。 「あ……佐藤君……」 「ん?」  スプーンをくわえながら桂木さんを見る。 「……間接、キス」  スプーンを指差しながら、桂木さんは恥ずかしそうに俯いた。 「……」  ……どう返答すればいいかわからない。  ただ言えるのは、すんげー恥ずかしいということ。  恥ずかしくて、どうすればいいかわからなくて、そのままスプーンをくわえたまま固まってしまった。  ……それでまた恥ずかしさが増したのは秘密。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2812人が本棚に入れています
本棚に追加