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「……え、何これ。味がしない」
ええ、しませんよ。ただ人の弁当を勝手に食べてそんなこと口に出したらダメだろこのやろー。
「馬鹿だな、お前は。俺は薄口が好きなんだよ」
「お前ラーメンにマヨネーズかけて食うほどこってりしたの好きじゃねーか」
それを言うなそれを。お前がそんなこと言うから桂木さんが俯いてしまったじゃねーか。
「そ、そのためにブロッコリーにマヨネーズがかかってるんだろうが」
「じゃあブロッコリー貰い」
「ぇ───」
降屋と話してると、一緒にご飯を食べてるもう1人の友達がブロッコリーをまたも勝手に食べた。
「……硬い」
お前らもう黙れよ……。
桂木さんを見ると、膝の上に両手をぐっとして、哀しそうな顔をしていた。
「お前のお母さんってこんな料理下手だったか?」
「俺こんな弁当絶対嫌だわ」
ガタッ───。
大きな音がしたかと思うと、勢いよく桂木さんが席を立って、走って教室を出て行った。
普段大人しい桂木さんの行動に、教室が一気に静かになる。
「…………」
「…………」
それはこの2人も同じ。
「ハァ……お前らマジでやっかい」
そんな教室で、喋るのは箸を持つ俺だけ。
「この弁当、桂木さんが作ってくれたんだよ」
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