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いた。
大きな木の下で、三角座りしてる桂木さん。
土で汚れた上履きを履いて、両腕で脚をぎゅっとして、顔を膝に押し付けて蹲(うずくま)ってる。
「やっと見つけた」
桂木さんに近付きながら声を出して、自分が来たことをアピールする。
ビクッとなって、桂木さんは更に小さく蹲った。
「ごちそうさま」
桂木さんの前に弁当箱を置いて、隣に座る。
小さくなってる桂木さんを横目に、大きく伸びをして身体の力を抜いた。
学校中探しまくってたから、正直疲れた。
「……怒ってないの?」
突然に。桂木さんが小さく言葉を発した。
「どうして?」
やさしく聞き返す。
「だって、佐藤君……弁当箱馬鹿にされて、ご飯だって、美味しく、なかったでしょ……?」
声を聞いてわかった。
桂木さん、泣いてる。
「うん、美味しくなかった」
はっきり答えた。今までみたいに気を使わずに。
そう答えると桂木さんはまたビクッとなって、両手をぎゅっとして更に蹲る。
「……だよね───」
「卵焼きは醤油と砂糖を増やして、ブロッコリーはもう少し茹でた方が良いかな。ウィンナーももう少し火を通した方が良いかも。あとにお肉にみかんジャムは合わないかな。ミートボールはまだ冷たかったから」
ここで一旦言葉を区切る。
「次作るときはそこを直してきてね」
この言葉を強調する為に。
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