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今の言葉に驚いたのか、桂木さんはハッとするように顔を上げた。
目の周りは涙で濡れていて、赤くなっている。
「……また、作ってもいいの?」
「うん」
「……でも、佐藤君を困らせない? また弁当箱ピンク色だったり、ブロッコリー硬かったり、焼けてなかったり……」
「困らないよ。桂木さんが作ってくれるの嬉しいし。失敗してたらまた今みたいにどこがいけなかった伝えるから、ちゃんと。あと絶対弁当残したりしないから、安心して」
そう言うと、桂木さんは弁当箱を持って少し振って、俺が完食してるか確認した。
「……ありがと、佐藤君」
涙を浮かべながら、桂木さんは笑顔になった。
キーンコーン カーンコーン
体育館側にある水道で桂木さんと上履きを洗ってると、昼休み終了を告げるチャイムが響いた。
「あ……チャイム」
上履きを洗うてを止めて、桂木さんは俺の方を見る。
「あ、昼休み終わっちゃった」
「授業……遅れちゃう」
「そうだね」
「……戻らないの?」
「んー、良いかな。上履き乾かさないといけないし。サボっちゃお」
「……なら、私もサボろ」
少し笑顔を浮かべて、桂木さんは再び上履きを洗い始めた。
「初めて。授業サボるの」
「そうなんだ」
桂木さん真面目だもんな。授業サボるんてことあるわけないか。
「ふふ。嬉しい」
「何が?」
「だって、こうして佐藤君と、お喋り出来るから」
上履きを洗い終えて、乾かしてるとときも、ずっと桂木さんと会話していた。
会話は途切れることなく、そのまま2人で放課後を迎えた。
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