柑橘系祝福

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 桂木さんに初めて弁当を作ってもらってから早2週間。  硬かったブロッコリーは適度に柔らかくなり、卵焼きは甘くなった。  昼休みから2人で授業をサボって以来、学校ではもう俺と桂木さんは付き合ってるという仮定が結論に変わってしまった。  そりゃま……弁当作ってもらって、一緒に授業サボったり下校してたらそうなるよな。  兎にも角にも。そんなことは一切気にしていない……というか、知らない様子で毎日弁当を作ってくれる桂木さん。  お母さんにはもう言った。桂木さんに弁当作ってもらうからいらないって。本格的に彼女だと勘違いし出したが、勘違いなのでほって置くことにした。  桂木さんの料理の腕は最初に比べてかなり良くなったと思う。ホントに。お世辞なしで。  その変化を楽しめるのも嬉しいし、今だに弁当を作ってもらってる。  もちろんまだ『美味しい』って言えるほどじゃないし、失敗してるときもある。そのときはちゃんと『ここがいけなかったよ』とか、『ここをこうしたらいいよ』とか、一緒に下校してるときに弁当箱を渡しながら伝えている。  俺の意見を熱心に聴いて、うんうんと頷きながらいつもメモ帳に取ってるその様子はとても可愛らしい。 「……6件か」  そんなこんなで、今日は俺の誕生日である。  今口から漏れた言葉は決して、朝起きてかなり期待しながら携帯を開いたけどお誕生日おめでとうメールが6通しか来てなくて少ないとか思ってちょっとショックとかそういうわけではない。  まだ時刻は……10時40分。メールはまだこれからくる。はず。  そんな淡い期待を込めながら身体を起こして、洗面所へ向かった。  そういえば確か、前に桂木さんと教室掃除してた時、桂木さんが俺の誕生日に何かくれるって言ってた気がするんだけど……何だったっけ?
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