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「亮太、あなた誕生日なのに家でごろごろするつもり?」
ソファに寝転んで、いつメールが着ても良いようにぼーっと携帯を弄ってると、昼ごはんを作ってるお母さんが台所からそんなことを言ってきた。
「いやいや。誕生日くらいこうして王様気分を味わうのもいいじゃないか」
「いつもと変わらない気がするけど? 梓ちゃんと遊んだらいいのに」
ピンポーン。
呆れながらお母さんが言葉を発し終えたそのとき、インターホンが鳴った。
「はーい」
お母さんとの会話も少し面倒だったので、会話を切るチャンスだと思い、ソファを降りて玄関に向かう。
「あ、亮太きっと静香の代引き商品かもー」
「わかったー」
妹の代引き商品を運んでくれたであろう業者の人を出迎えるため、玄関をガチャッと開いた。
「あ……佐藤君」
「桂木さん……?」
玄関の前にいたのは業者の人ではなく、私服姿の桂木さんが立っていた。
その両手にはケーキ箱が大事そうに抱えられている。
「どうしたの?」
あ、そうだ。桂木さん、ケーキ作ってくれるとか言ってたんだ。思い出した。
「えっと……その、今日は……佐藤君の誕生日で……だから、一生懸命、ケーキ作ったから……」
顔を赤くして、少し俯きながら目をぎゅっと閉じる桂木さん。
「良かったら……ケーキ、食べて」
素直に可愛かった。
「うん。ありがと、桂木さん」
笑顔でケーキを受け取って、出来るだけ優しく答えた。
「え、ん、あ……じゃ、私はこれで」
「ぇ───」
気付くと、桂木さんは目の前にいず、すごい速さで走り去ってしまった。
あんなに早く動けるんだ……知らなかった。
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