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桂木さんから受け取ったケーキを持って、リビングに向かう。
「あれ、代引きじゃなかったの? せっかく財布用意してたのに」
「ううん。桂木さんから。ケーキ作ってくれたんだって」
「まあ。で、梓ちゃんは?」
「帰っちゃった」
それもすごい速さで。
桂木さんが作ってくれたケーキか……どんなのだろ。
「早く見せてよ、亮太」
俺以上にすごくわくわくしてるのは何故ですかお母さん。
丁寧に箱を解いて、中が露わになる。
入ってたのは、直径10センチほどの小さな丸いみかんケーキだった。
「まあ、可愛らしい。梓ちゃんらしいわね」
確かにとてもおいしそうで可愛らしい。見た目は。
「早く食べたら?」
「……うん」
問題は、味。
確かに最近になって桂木さんの料理は上達してきたけど、それはあくまで最初と比べての話し。
しかも、俺は桂木さんのケーキを食べたことがない。
不味くはないと思う。けど……どんな味かだいたいイメージが出来てしまう。
「いただきます」
フォークを持って、一口分掬い口に運んだ。
「どう? おいしい?」
「……何か、シャバシャバする」
スポンジかな、すっごい何か……シャバシャバする。
あと少し予想できたけど、やっぱり味がしない。
綺麗にみかんの良さを消している。
正に、桂木マジック。
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