柑橘系祝福

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 デパートについて、食品売場までおばさまと並んで歩く。  こうして誰かと買い物に行くの……かなり久しぶり。  お母さんが働き始めてからだから、中2ずっと1人で買い物してたのか。  それまでは今みたいにお母さんと並んで、手を繋いで。 「まずケーキの材料から買おっか」 「あ、はい」  少しだけ。  寂しい気持ちになった。 「さてと、みかんはどこかな」 「おばさま、買い物カゴは私が持ちます」 「いいのよ気遣わなくても」 「いえ。私が持ちます」 「そう? ありがと」  お母さんと買い物に行くとき、いつも私が買い物カゴを持っていた。  だからかな。おばさまと並んで、私が買い物カゴを持ちたかった。 「私もね……」  買い物をしてる最中、前触れも無く突然おばさまが喋り始めた。 「梓ちゃんくらいのとき、全然料理出来なかったの」 「え……あんなに料理お上手ですのに」 「私だって最初からあんなんじゃなかったわよ。全く出来なくて、私が作っても全然味がしないの。梓ちゃんみたいに」  おばさま……笑いながら言ってますけど、今の発言少し心にきましたよ。 「でね。好きな男の子の誕生日に、ケーキ作って持って行ったの」  ……私と同じ。 「それで……どうだったんですか?」 「ボロクソに言われちゃった。不味い、よくこんなケーキ作れたなって。向こうは笑いながら言ってたけど、私は辛かったなぁ」  …………。
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