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「それが後からもっと辛くなってきてね。思わず部屋で泣いちゃったの。そこで私のお母さんが来て、事情を話したらすぐに一緒に作ろって、その男の子を見返してやろうって言ってね。お母さんと一緒にもう一度ケーキ作ったの」
……おばさまにもそんなことがあったんだ。
「そのときに作ったのが、みかんケーキ」
笑みを浮かべながら、おばさまは生クリームを私が持つ買い物カゴに入れる。
「だからね、梓ちゃんがほっとけなかったの。昔の私を見てるみたいで。梓ちゃんが料理教えてもらってないなら、私が料理教えてあげたくて。おせっかいだけどね」
「おせっかいだなんて、そんなことないです」
「だから2人で、亮太を見返してやりましょ」
はい。と言いたいところだけど、私にはまだ気になることがある。
「あの。それで、ケーキ作って渡したんですか?」
そう聴くと、おばさまはまた笑みを浮かべた。
「もちろん。それからはその男の子、私の料理が一番だって言うくらいよ。今もね」
おばさまの言葉を聞いて、私は胸が高鳴った。
……佐藤君にも、私の料理が一番だって言ってほしいな。ずっと、これからも。
**
「ただいまー」
「おかえり。代引き届いたよ」
「ホント? いくらだった?」
重たい袋はおばさまが持って、私は軽い袋を持って佐藤君ん家のリビングに入った。
今みたいに自然な感じでリビングに入って、そこで佐藤君が待ってくれてて、それだけ何だかこの家の家族になれた気分だった。
「さ、梓ちゃん。作ろっか」
「はい」
絶対、佐藤君に美味しいって言ってもらえるように、頑張らなきゃ。
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