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佐藤君に美味しいって言ってもらいたい。
そう思いながらその想いを込めながら、一生懸命ケーキを作った。
「じゃあ梓ちゃん。最後の仕上げ」
「はい……」
板チョコにホワイトチョコで『誕生日おめでとう』と書いて、それを上にそっと乗せる。
……完成。
「はい、お疲れ様」
「ふぅ……」
もう16時だ。結構時間掛かっちゃった。
「ホントは1日冷蔵庫で冷やした方が良いんだけど……すぐに食べてほしいわよね?」
「はい」
早く、佐藤君に食べてもらいたい。でも……美味しく出来たかな。不安だな。
「じゃ、持って行ってあげて。私後片付けするから」
「あ、私も片付けます」
「良いから、早く亮太に食べさせてあげて。きっとお腹空かせてるから」
微笑みながら話すおばさま。
そうだ。昼間からずっと私が台所使ってるから、佐藤君、お昼ごはん食べてない……。
「わかりました」
フォークとナイフが乗ったお皿を左手に、手のひらより少し大きいサイズのケーキを右手に持って、リビングに向かった。
「佐藤君、出来たよ……」
佐藤君を呼びながらリビングに入ったけど、テレビをつけたまま佐藤君はソファで眠っていた。
小さく寝息を立てて。だいぶ前から寝ていたんだと思う。
机の上にケーキとお皿を置いて、寝ている佐藤君の顔を見ながら膝を曲げる。
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