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「良い彼女じゃない」
「だから、彼女じゃないって」
ため息交じりに返答して、1人玄関からリビングに向かう。
「ホントに付き合ってないの?」
「何回も言ってるのに……」
「ちょっと待ちなさい」
……何?
返事をするのも面倒くさくて、無言で振り返ると、玄関の前で立っているお母さんは少し怒った表情をして俺を見ていた。
「亮太、それはいけないことよ」
「?」
言ってる意味がわからない。
「梓ちゃんがいつまでも今みたいに亮太のことを想ってる訳じゃないからね。いつか愛想尽かされるわよ」
「だから、何が言いたいの?」
「梓ちゃんのこと好きなの? 嫌いなの?」
思わず口が塞がってしまった。
何て返事をしたらいいかわからなかった。
「それみそ。自分の気持ちもはっきりしてないのに、中途半端な気持ちで梓ちゃんに接するなんて、梓ちゃんが可哀想よ」
「……可哀想?」
「どうせあなたのことだから梓ちゃんが付きまとってくるとか思ってるんでしょ」
「……まあ、そりゃ仕方ないことだろ」
あんなストーカーまがいなことされたら。
「なら何で優しくするの? 付きまとわれてるなんて思うなら無視しとけばいいじゃない」
「そんな、無視し続けるなんて……」
「出来ない? だから優しくするの?」
「それは……だって、めんどくさいけど、非情になんてなれないし、仕方なく───」
「あなたは梓ちゃんが好きなのか嫌いなのかもはっきりしてない。むしろ付きまとわれてると思ってる。けど梓ちゃんには優しく接する。はあ? 嫌いなら嫌いで突き放せばいいじゃない。変に仲良くなってその状況をめんどくさいなんて思ってるんじゃないわよ。仕方なく? ふざけなんな。梓ちゃんは女の子なの。異性と接するということを考えなさい。そんな優しさね、優しいなんて言わないの」
……なら何だってんだよ。
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