柑橘系祝福

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「あなたのことをあんなに想ってくれる人なんていないわよ?」 「……」  『嬉しい』  俺は、桂木さんに対しての好意は冷めていた。これは事実。  『佐藤君と、付き合ってるて噂が流れて……私は……すごく、嬉しいよ』  でも、俺も……アノ噂を聞いたとき…………───。 「自分の気持ちに正直になりなさい。あなたがめんどくさいなんて思ってるなら、梓ちゃんに失礼だわ。いつまでも自分に……『付きまとう』なんて思わないことね。それこそ『勘違い』よ」  怒った表情のまま歩みだし、俺の横を通りすぎる。 「少しは反省しなさい」  そう言って、リビングと玄関を繋ぐ扉をバタンと強めに閉めた。  お母さんに言い返す言葉なんて出て来なかった。  あまりにも正し過ぎて、その通り過ぎて。  桂木さんが俺に『かまって』くることが当たり前だと思ってた。それをめんどくさいって感じてたし、非情なことが言えないから仕方なくさせてあげてる。なんて上からな目線で接してた。  それが当たり前になっていた。  失礼だ。桂木さんに。  リビングにどんな顔をして入ったら良いかわからなくて、そのまま2階の自室に入り、ベッドに寝転ぶ。  『梓ちゃんのこと好きなの? 嫌いなの?』  思わず詰まってしまったあの質問。  好きなのか。嫌いなのか。  素直な気持ち、わからないが答えだった。
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